Sensor & IoT Consortium

人工臓器・生体組織分野における体内外センシング技術の最前線

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~血栓光イメージング・センシング、フレキシブル体内外センサ、生体組織の弾性率イメージング~


IoTの普及と共にセンサの重要性が増している中、先端センサ研究を行う大学とセンサで事業を行う企業との間で協調関係を築き、ビジネスモデルの検討やセンサ技術の検証等の議論を行う場として活動しているセンサ&IoTコンソーシアム。

コンソーシアムが主催(後援:サイエンス&テクノロジー)する本セミナーでは、生体内組織のセンシングを中心に、血液の非侵襲リアルタイム計測/血栓センシング、フレキシブル体内外センサ、走査型触覚顕微鏡による生体組織の弾性率評価といった先端研究例を3名の講師陣が解説します。

セミナー講師

コーディネーター:(国研)産業技術総合研究所 迫田大輔 氏

第1部 「人工臓器内血栓光イメージング・センシング」(13:30~14:25)
 (国研)産業技術総合研究所 健康医工学研究部門 人工臓器研究グループ 主任研究員 迫田大輔 氏
 【専門】生体光学, 人工臓器工学

第2部 「フレキシブルエレクトロニクスによる生体センシング」(14:30~15:25)
  旭川医科大学 先進医工学研究センター 准教授 井上雄介 氏
 【専門】生体医工学・循環生理学

第3部 「走査型触覚顕微鏡による生体組織の弾性率イメージング」(15:30~16:25)
  弘前大学 大学院理工学研究科 准教授 森脇健司 氏
 【専門】医用計測工学

セミナー講演内容

第1部 「人工臓器内血栓光イメージング・センシング」

(国研)産業技術総合研究所 健康医工学研究部門 人工臓器研究グループ 主任研究員 迫田大輔 氏

 血液透析や体外式膜型人工肺(ECMO)等における人工的な血液循環路内では血液が凝固し、血栓が形成されることがある。血栓が周囲血流によって飛散し患者血管内で詰まる血栓梗塞症は、しばしば重篤な事態となりえる。一方で血栓梗塞症を防ぐために抗凝固療法が行われるが出血のリスクとなる。この様に血栓と出血はトレードオフの関係にある。いつ血栓ができ得るかをリアルタイムかつ高精度に知ることができれば、このトレードオフ問題を最適化し、安全な血液透析やECMO管理に寄与すると考え、血栓の光イメージング・センシング研究に取り組んできた。
 可視~近赤外波長の光を血液に照射すると、光は吸収および散乱される。どれくらい光吸収また光散乱が起こるかを総じて血液の”光学特性”と呼ぶ。血液の光学特性は血液の性状に基づくため、光学特性を理解し上手く処理することで様々な血液の非侵襲リアルタイム計測が実現できる。血栓センシングもその一つである。
 本発表では、血液の光学特性の基礎、生体外におけるヒトその他動物血液を使用した光計測実験方法の基礎、血栓イメージング・センシング法、血液透析やECMO用のセンサIoTの展望等について紹介する。


第2部 「フレキシブルエレクトロニクスによる生体センシング」

旭川医科大学 先進医工学研究センター 准教授 井上雄介 氏

 半導体エレクトロニクスの発展はめざましく、我々の生活を一変させています。特にシリコン無機半導体は微細化と高密度化を極め、コンピュータを代表とする演算処理の早さと記憶容量の拡大に大きく貢献しています。
 一方で生体をセンシングするために求められるエレクトロニクスへの要求は柔らかさや薄さ、低コスト性などがあり、これらを実現可能な有機エレクトロニクスを用いたフレキシブルエレクトロニクスが注目されています。有機半導体の応用可能性は巨大であり、有機半導体を伝導層とする電界効果トランジスタの登場と高性能化に伴い、有機材料の軽量性・曲げやすさ・低価格性を活かした新たな応用分野の発展への期待が急速に高まっています。
 柔らかく、生体適合性の材料で電子・光デバイスを作製することによって、人と親和性の高いエレクトロニクスが実現されつつあります。エレクトロニクスの医療・ヘルスケア分野への応用が積極的に進んでおり、ヘルスケア分野において、皮膚に絆創膏のように直接貼り付けても装着感やストレスなく健康状態を24時間モニターし続けることができるセンサや、生体の中で使用可能のセンサが開発されています。
 セミナーでは下記の内容を含む講演を行います。
 ・フレキシブルエレクトロニクスとは
 ・有機エレクトロニクスと無機エレクトロニクス
 ・生体用センサに求められる要件
 ・フレキシブルエレクトロニクスセンサの現状
 ・生体内センサ


第3部 「走査型触覚顕微鏡による生体組織の弾性率イメージング」

弘前大学 大学院理工学研究科 准教授 森脇健司 氏

 近年、細胞や生体分子のメカノバイオロジー研究が発展し、その知見がマクロな移植組織体のなかでどのように活かせるのかが今後重要になると考える。今回着目する弾性率について、移植物の特性が移植先と大きく異なると変形に伴い接続部に応力集中が発生する。特に血管組織ではこの現象はコンプライアンスミスマッチングとして知られており、移植後の瘤化・石灰化という合併症の原因になっている。
 細胞等の微細な組織に応用できる力学特性計測法として原子間力顕微鏡(AFM)が広く知られている。しかし、AFMはピエゾスキャナを使用しているため観察領域に制限があり、移植を行うようなサイズの組織の力学特性は、いまだ古典的な引張・圧縮・曲げ試験などで評価されている。
 一方、我々は生体軟組織表面の弾性率イメージングツールとして走査型触覚顕微鏡(SHM)の開発を行ってきた。SHMは高空間分解能(数μm程度)・高観察領域(10cm角程度)・弾性率の高検出分解能(数Pa程度)のすべてを満たし、光学顕微鏡で染色スライドを観察するようなサイズ感で弾性率分布を可視化できる。これまで、主に血管組織を対象に観察を行い、大動脈の部位毎の弾性構造の違いや組織の変形による弾性構造の変化などを明らかにしてきた。
 本発表では、走査型触覚顕微鏡の計測原理やこれまでの血管組織観察例について説明した後、再生医療型組織体の力学評価ツールとしての有用性や、密度・粘着特性という他物性との同時イメージングについて紹介する。

セミナー詳細情報、お申し込み

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